一位一刀彫

  • 岐阜県高山市、飛騨市、下呂市
  • 伝統工芸品 | 木工品・竹工品
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一位一刀彫は、江戸時代末期、飛騨の卓越した彫刻師である松田亮長が、着物の帯留めや根付に独自の技法を施したことから始まった木彫工芸です。この彫刻が現代の旅人を惹きつけてやまない理由は、一般的な木彫のように表面を滑らかに研磨したり彩色したりせず、鋭いノミの切痕をそのまま残すことで生まれる「圧倒的な立体…

一位一刀彫は、江戸時代末期、飛騨の卓越した彫刻師である松田亮長が、着物の帯留めや根付に独自の技法を施したことから始まった木彫工芸です。この彫刻が現代の旅人を惹きつけてやまない理由は、一般的な木彫のように表面を滑らかに研磨したり彩色したりせず、鋭いノミの切痕をそのまま残すことで生まれる「圧倒的な立体感と力強さ」にあります。

繊細な造形美は、銘木「イチイ」の選定と、職人が数十種類ものノミを巧みに操る「一刀両断」の技術によって生み出されます。かつて天皇即位の折りに入木として献上されたことからその名が付いたとされるイチイは、赤身の深い琥珀色と白太の鮮やかな白色のコントラストが非常に美しい木材です。職人はこの色調の境界線を巧みに計算しながら、下描きなしの感覚で一気に彫り進めます。木肌に走る鋭利な直線と面は、光を受けることで深い陰影を生み出し、小ぶりな置物であっても部屋の空気を引き締めるほどの強い存在感を放ちます。

着色を一切しないため、歳月とともに赤身は深みのある飴色へ、白太は落ち着いた艶を帯び、育てる楽しみも格別です。