甲州手彫印章
- 山梨県甲府市、市川三郷町、身延町
- 伝統工芸品 | その他の工芸品
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かつて武田信玄の時代に甲斐の国で良質な水晶が発掘されたことから始まったとされる甲州手彫印章の手技は、文字のデザインから彫刻にいたるまですべてを職人の手作業で行い、世界にただ一つ、本人だけが持つ「証」を一本の円柱に刻み込みます。
印章の価値を支えるのが、「字割り」と「布字」と呼ばれる最初の工程です…
かつて武田信玄の時代に甲斐の国で良質な水晶が発掘されたことから始まったとされる甲州手彫印章の手技は、文字のデザインから彫刻にいたるまですべてを職人の手作業で行い、世界にただ一つ、本人だけが持つ「証」を一本の円柱に刻み込みます。
印章の価値を支えるのが、「字割り」と「布字」と呼ばれる最初の工程です。職人は、注文者の名前の画数や全体のバランスを考慮し、驚くほど細かな配分で文字のレイアウトを設計します。これを印面に直接、墨と朱肉を使って反転させた文字を描き込んでいきます。この段階で印章の美しさと風格の骨組みが決まります。
職人の技量が試されるのが、独自の刀具を操る「手彫り」の工程です。柘や水牛の角、象牙といった硬質な素材の印面に向かい、職人は「きさげ」と呼ばれる小刀を指先で細かくコントロールしながら、不要な部分を彫り下げていきます。機械彫りのように均一で四角四面な溝ではなく、手彫りならではの「刀の切れ味」が残る底面と、わずかに強弱のついた文字の輪郭が、紙に捺したときの鮮明で力強い陰影を生み出します。この絶妙なゆらぎこそが、決して真似のできない偽造防止の役割を果たします。
