福山琴
- 広島県福山市
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福山琴は、城下町の隆盛とともに培われた音への執念が宿る楽器です。瀬戸内の穏やかな空気を吸い込んで育った一本の桐の丸太が、職人の手によって一本の琴へと生まれ変わるプロセスには、驚くべき木工技術が隠されています。
核心となるのは、琴の裏側から内部をくり抜いた空洞部分に施される「綾杉」と呼ばれる彫刻で…
福山琴は、城下町の隆盛とともに培われた音への執念が宿る楽器です。瀬戸内の穏やかな空気を吸い込んで育った一本の桐の丸太が、職人の手によって一本の琴へと生まれ変わるプロセスには、驚くべき木工技術が隠されています。
核心となるのは、琴の裏側から内部をくり抜いた空洞部分に施される「綾杉」と呼ばれる彫刻です。職人は鋭く研ぎ澄ましたノミを握り、丸みを帯びた内壁に向かって、規則正しいV字型の溝を一本ずつ手作業で彫り進めていきます。このノミ跡の深さや角度、間隔のわずかな違いが、弦の振動を内部で複雑に跳ね返らせ、あの吸い込まれるような深く澄んだ残響を生み出す決定的な要素となります。木理の詰まり具合を指先で叩き、音の響きを予測しながら刃を入れる作業は、まさに木との対話そのものです。
外観の美しさを決定づけるのは、焼きを入れた重い鉄のコテで行う「焼き仕上げ」です。桐の表面を絶妙な加減で燻すことで、柔らかい部分は削れ、緻密な木目が立体的に浮かび上がります。さらに、琴の端を飾る「柏葉」や「四分六」と呼ばれる部位には、紫檀や黒檀といった硬質な木材がはめ込まれ、全体の輪郭を凛と引き締めます。
