紀州漆器

  • 和歌山県和歌山市、海南市、紀美野町
  • 伝統工芸品 | 漆器
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紀州漆器は、黒漆の下地の上に朱漆を塗り重ね、それを使い込むことによって表面の朱が擦れ、下層の黒が斑模様のように浮かび上がる「根来塗り」の技法を今に伝える漆器です。観賞用の華美な加飾ではなく、日々の暮らしで頻繁に使用されることを前提とした、シンプルで実質本位のデザインと構造を持っています。 視覚的…

紀州漆器は、黒漆の下地の上に朱漆を塗り重ね、それを使い込むことによって表面の朱が擦れ、下層の黒が斑模様のように浮かび上がる「根来塗り」の技法を今に伝える漆器です。観賞用の華美な加飾ではなく、日々の暮らしで頻繁に使用されることを前提とした、シンプルで実質本位のデザインと構造を持っています。

視覚的な最大の特徴は、経年変化によって完成していく漆の表情にあります。新品の段階では鮮やかな朱色の器ですが、毎日の食事や洗浄によって摩擦が加わることで、角や縁の部分から少しずつ塗膜が研がれ、内に隠された黒漆の深い渋みが露出します。この擦れ方は使う人の手の癖や使用頻度によって完全に異なるため、年月を経て自分だけの道具へと育っていくプロセスを日常的に楽しむことができます。

道具としての扱いやすさを支えるのは、歪みのない木地成形と、実用的な塗りの工程です。椀や盆といった形状に合わせて、変形しにくい素地を正確に切り出し、その上に均一な厚みで漆を塗り重ねていきます。過剰な厚塗りをせず、素地の良さを活かしながら必要十分な塗膜を形成することで、持ったときに重すぎず、日常の配膳でも扱いやすい軽快な重量感を実現しています。