川尻筆

  • 広島県呉市
  • 伝統工芸品 | 文具
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江戸時代末期から瀬戸内海の穏やかな気候とともに育まれてきた川尻筆。同じ広島県の熊野筆と双璧をなす高級筆の産地でありながら、この地が180年以上の歴史の中で愚直なまでに磨き上げてきたのは、熟練の職人だけが到達できる「どこまでもまっすぐで、一切のブレがない均一な毛並み」です。 個性を形作っているのが…

江戸時代末期から瀬戸内海の穏やかな気候とともに育まれてきた川尻筆。同じ広島県の熊野筆と双璧をなす高級筆の産地でありながら、この地が180年以上の歴史の中で愚直なまでに磨き上げてきたのは、熟練の職人だけが到達できる「どこまでもまっすぐで、一切のブレがない均一な毛並み」です。

個性を形作っているのが、全国的にも極めて珍しい「無水練り(かわきねり)」と呼ばれる超絶技巧です。多くの産地が水を使って毛を混ぜ合わせるのに対し、川尻の職人は、完全に乾燥した状態の獣毛を指先の繊細な感覚だけで混ぜ合わせていきます。水に頼らないため、毛の一本一本が持つ本来の弾力やクセ、太さの違いを職人の目と指先だけで完璧に見極め、絶妙な塩梅でブレンドしなければなりません。この過酷な工程を経るからこそ、墨を含ませたときに毛が一本も反り返らず、書き手の微妙な筆圧のコントロールにどこまでも忠実に寄り添う、極上の使い心地が生まれるのです。

現代のライフスタイルにおいて、この洗練された川尻筆は、手書きの手紙や日記を綴る時間を、一段と上質で知的なひとときへと引き上げてくれます。